受入れヤードで持ち込まれた廃棄物の中からモバイルバッテリーを見つけ、手を止めて確認している産廃現場の担当者

リチウムイオン電池の分別と発火対策|混ぜない・つぶさないの基本

雑多な廃棄物の山を仕分けていて、手のひらサイズの黒い箱がぽろっと出てくる。 「あ、モバイルバッテリーだ」と気づいて、手が止まる。

そんな瞬間、ありませんか。

数年前まで、電池といえば車の鉛バッテリーくらいでした。 でも今は、モバイルバッテリー、ワイヤレスイヤホン、電動工具、加熱式たばこ、掃除機、電動アシスト自転車——充電できるものにはほぼリチウムイオン電池が入っています。しかも、その多くが機器の中に埋め込まれていて、外から見えません。

だから、混ざります。 誰かがサボったからではなく、見えないものは、見えないまま流れてくるからです。

最初にお伝えしたいのは、これは現場の努力不足の話ではない、ということです。 押さえる軸は3つだけ。「見つける」「混ぜない」「つぶさない」。 この記事では、この3つを、受入れ・保管・初動の順に、今日から確認できるかたちで整理します。

結論:リチウムイオン電池は、(1) 受入れの入口で見つける——排出事業者に事前に電池の有無を聞き、機器内蔵型(イヤホン・電動工具など)も電池が入っている前提で見る、(2) 他の廃棄物と混ぜない——端子をテープで覆い、不燃の容器に単独で入れ、可燃物から離して置く、(3) つぶさない・濡らさない・熱を与えない——破砕機や圧縮車に絶対に入れない。リチウムイオン電池は内部で短絡すると「熱暴走」を起こし、いったん始まると普通の消火器では止まりにくいためです。品目の区分(マニフェストの「廃棄物の種類」欄)や回収・リサイクルのルートは、自治体や契約している取引先によって運用が分かれます。ここは思い込まず、取引先と一度そろえておくと確実です。

順番に見ていきましょう。

  1. まず「どこに紛れているか」を知って、入口で見つける
  2. 混ぜない・つぶさないための保管のしかた
  3. 発煙・発火に気づいたときの初動

1. リチウムイオン電池は「どこに紛れているか」を知る

「リチウムイオン電池は危ないので分別してください」と言われても、見えなければ分別のしようがありません。だから最初にやりたいのは、注意することではなく、どこに入っているかを知ることです。

現場に流れてきやすいのは、だいたいこのあたりです。

やっかいなのは、二段目の機器内蔵型です。 外から見ると「ただの小型家電」や「廃プラスチック」に見えるので、そのまま混ぜて流れていきます。分解しないと電池が入っているとわからないものも多く、見た目だけで判断するのは、正直むずかしいというのが実感に近いところだと思います。

だからこそ、頼りになるのは排出事業者からの事前の情報です。 どんな廃棄物が、どういう状態で出てくるのか。電池を含む機器が混ざる可能性があるのか。ここを持ち込みの前に一度聞いておくだけで、入口の精度がぐっと上がります。性状の情報をやりとりする書面の作り方はWDS(廃棄物データシート)の作り方と渡すタイミングに整理しています。

なお、リチウムイオン電池そのものが産業廃棄物としてどの品目にあたるかは、金属・プラスチックなどが一体になっているため、現場でひとつに決めきれないことがあります。品目の区分は産業廃棄物20種類の分類を現場で迷わない早見表が参考になりますが、実際の記載や行き先は自治体・契約で運用が分かれるところです。ここは自己判断で決めず、取引先とそろえておくのが安全です。

2. 混ぜない・つぶさないための保管のしかた

リチウムイオン電池は破砕・圧縮のラインに入れず、端子を覆って不燃容器に単独で分ける、という分かれ道の概念図
電池は破砕・圧縮のラインに入れない。端子を覆って、不燃の容器に単独で置く

見つけたあとは、置き方です。ここは3つだけ押さえれば大丈夫です。

① 端子を覆って、ショートさせない

電池の端子(+と−の金属部分)が、他の金属——ビス、針金、缶、別の電池の端子——に触れると、そこから短絡(ショート)して一気に発熱することがあります。

だから、端子をビニールテープなどで覆う。これがいちばん手軽で、いちばん効きます。 機器に埋め込まれたままのものは端子が見えないので、無理に取り出そうとせず、機器ごと分けて置きます。分解のときに電池を傷つけるほうが危ないためです。

② 不燃の容器に、単独で入れる

段ボールやプラスチックの箱ではなく、蓋のできる金属容器など燃えにくいものに入れます。 そして、他の廃棄物と混ぜない。とくに、廃プラスチック、紙くず、木くず、廃油のような燃えやすいものの近くに置くと、万が一のときに火が移ります。

置き場所は、直射日光の当たらない、風の通る、涼しいところ。夏場の屋外にそのまま積むと、それだけで温度が上がっていきます。可燃物からは距離をとって、できれば屋外の不燃の区画に。囲い・掲示板といった保管そのもののルールは保管基準(高さ・囲い・掲示板)を満たす積み方にまとめています。

なお、鉛バッテリーとリチウムイオン電池は混ぜないでください。処理ルートが別で、危険の質も違います。鉛蓄電池側の置き方は廃バッテリー・鉛蓄電池の保管|発火と液漏れを防ぐコツをどうぞ。

③ つぶさない・濡らさない・熱を与えない

これがいちばん大事なところです。

リチウムイオン電池は、強い力で潰れたり、刺さったり、強い衝撃を受けたりすると、内部で短絡します。そうすると電池自身が発熱し、その熱がさらに反応を進めて——という形で温度が上がり続けることがあります。これを熱暴走と呼びます。

熱暴走のやっかいなところは、内部から可燃性のガスを出しながら燃えるため、外から酸素を断つタイプの消火器では止まりにくいことです。だから、火が出てから消すのではなく、そもそも潰さないという一点に力を入れます。

具体的には、

とくに、膨らんでいる電池(パンパンに膨れている、ケースが浮いている)は、すでに内部で異常が起きているサインです。見つけたら押さえつけたり穴を開けたりせず、そっと単独で不燃容器に入れて、離して置く。触らないほうが安全なこともあります。

結局のところ、入口で抜けば、破砕機まで届きません。設備の前で身構えるより、受入れの数秒で拾うほうがずっと確実です。

3. 発煙・発火に気づいたときの初動

万全に分けていても、見えない電池が混ざることはあります。 そのときに慌てないよう、気づいた瞬間の順番だけ決めておきましょう。

  1. 人を離す:まず周りの人を遠ざけます。電池は破裂して飛ぶことがあります。
  2. 知らせる:大きな声で周囲に伝え、責任者に連絡します。ひとりで消そうとしない。
  3. 燃えるものを離す(できる範囲で):周りの可燃物を重機などで遠ざけられれば、被害が広がりにくくなります。無理はしない。
  4. 消防に連絡する:リチウムイオン電池の火災は自力で消し切るのが難しいことがあります。迷ったら早めに呼ぶ。
  5. 冷やす:熱暴走は「熱」が続く現象なので、大量の水で冷やし続けるのが基本の考え方です。ただし、水をかけられる状況かどうか(周りの廃棄物・電気設備・排水)は現場によって違います。
  6. 見張る:いったん収まったように見えても、時間をおいて再び燃え出す(再燃)ことがあります。すぐ片付けず、しばらく監視します。

この手順は、自社の設備・消火設備・立地によって最適解が変わります。この記事の通りにやれば大丈夫、とは言えません。消防や取引先と一度相談して、自社版の手順を決めておくのがいちばん確実です。

そして、火災に至らなくても、発煙・小さな発火・ヒヤリとした瞬間は必ず記録して共有する。それが次の一件を防ぎます。共有のしかたはヒヤリハットを共有して事故を減らす朝礼の進め方に、漏えい・飛散が起きたときの報告の流れは飛散・流出・漏えいが起きたときの初動と報告手順にまとめています。

リチウムイオン電池で気をつけたいこと

明日からできる、電池を混ぜないための一手

現場で使えるチェックリスト

最後に

リチウムイオン電池は、この10年で一気に増えて、しかも見えないところに入り込んできた廃棄物です。 現場のルールが追いつきにくいのは、当たり前だと思います。あなたの現場だけが遅れているわけではありません。

でも、「見つける」「混ぜない」「つぶさない」の3つを押さえれば、防げることはかなり多い。 とくに、入口で一つ抜くこと。地味ですが、これがいちばん効きます。

山の中から小さな黒い箱を見つけて、手を止めて、別の容器に入れる。 その数秒の判断が、施設の火災を防ぎ、一緒に働く人を守っています。外からはまず見えない仕事です。でも、確かに誰かを守っています。

一度に完璧な体制をつくらなくて大丈夫。 今日はまず、容器をひとつ置くところから始めてみましょう。

リチウムイオン電池を専用の金属容器にきちんと分別し終え、整理された保管スペースを見て一息つく産廃現場の担当者
今日もちゃんと抜けた。その積み重ねが、現場を守っています

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