事務所の机で個人名義の許可証と会社設立の書類を見比べ、法人成りの段取りを考えている作業着姿の事業主

個人事業から法人成りしたら産廃許可は?取り直しの流れと段取り

「取引先から、そろそろ会社にしたらって言われてね」。 「従業員も増えたし、来期から法人にしようと思うんだ」。

個人で収集運搬を続けてきて、ここまで来た。法人成りは、事業がひとつ育った証です。 ただ、そこでふと手が止まるのが許可のことではないでしょうか。トラックも、ドライバーも、取引先も同じ。それなのに、名義が「個人」から「会社」に変わるだけで、許可はそのまま使えるのか——。

ここは現場でも迷いやすいところです。順番さえ分かれば、仕事を止めずに切り替えられます。

結論:個人で受けた産廃の許可は、法人成りしても会社へそのまま引き継ぐことはできません。個人と会社は法律上「別の人」なので、会社として新しく許可を取り直すのが基本です。合併や相続のような「承継」の手続きも、個人から自分の会社への法人成りには使えないのが一般的です。

そのため段取りは、①会社をつくる → ②会社で許可を申請する → ③会社の許可が下りてから仕事を切り替える → ④個人の許可を廃止する、の順番になります。個人の許可は、会社の許可が下りるまで手放さないのがポイントです。

※申請書類、審査にかかる期間、新設法人の経理的基礎の見方、講習会修了証の扱いなどは自治体ごとに運用が異なります。最終的な確認は、許可を受けている(受ける予定の)自治体それぞれの手引き・所管窓口でお願いします。

まずは、この3つだけ押さえれば大丈夫です。

  1. 法人成りは「引き継ぎ」ではなく「取り直し」
  2. 個人の許可は、会社の許可が下りるまで残しておく
  3. 許可を持っている自治体すべてで、それぞれ取り直す

何が起きやすいか

法人成りでいちばん多いすれ違いは、「会社をつくった日から、会社の名前で仕事ができる」と思ってしまうことです。

会社の設立登記は、書類がそろえば比較的すぐ終わります。税理士さんと相談して、設立日を決めて、通帳も会社名義でつくって——。ここまで進むと、気持ちはもう「会社の仕事」に切り替わっています。

けれど、産廃の許可は登記とは別の話です。会社として許可を申請し、審査を受け、許可証が届くまでには、数か月かかることも珍しくありません。その間、会社にはまだ許可がない状態です。

この期間に、会社名義で委託契約を結んだり、会社名でマニフェストを受け取ったりすると、許可のない会社が収集運搬を受けた形になってしまいます。悪気はなくても、ここがいちばん気をつけたいところです。

もうひとつが、個人の許可を先に返してしまうことです。「会社にしたから、個人の許可は廃止しておこう」と早めに届け出てしまうと、会社の許可が下りるまでの間、どちらの名義でも仕事ができなくなります。

法人成りの許可は「4段階」で考える

会社設立、許可申請、切り替え、個人廃止の4段階を、左から右へ並んだ4つの場面で確かめる図
法人成りは「会社設立 → 許可申請 → 切り替え → 個人廃止」の順。個人の許可は最後に手放す

ひとつずつ見れば大丈夫です。

① 会社設立:定款の「目的」に産廃の事業を入れる

会社をつくるときに、まず確認したいのが定款の事業目的です。「産業廃棄物の収集運搬業」など、許可を受けようとする事業が目的に入っていないと、申請の段階で直しが必要になることがあります。

あわせて、誰を役員にするかも、許可の目線で一度見ておきましょう。法人の許可では、取締役・監査役などの役員全員(場合によっては一定以上の株主なども)が欠格要件の確認対象になります。家族を役員に入れるなら、その方の住民票や登記されていないことの証明書なども必要になります。

② 許可申請:「新規」として、ひととおりそろえる

会社での申請は、新規の許可申請です。個人のときにそろえた書類を思い出しながら、会社名義でもう一度そろえていきます。

③ 切り替え:会社の許可証が届いてから、名義を変える

会社の許可証が届いたら、ここで初めて会社名義での仕事に切り替えます。

取引先にとっても、契約の結び直しは手間がかかります。「◯月◯日から会社名義に切り替わります」と、日付を決めて早めに案内しておくと、相手も社内の段取りがしやすくなります。

④ 個人廃止:切り替えが終わってから、個人の許可を廃止する

会社名義への切り替えが終わり、個人名義で受けている仕事がなくなったら、個人の許可の廃止届を出します。廃止届には法令で期限が決まっていますので、日数は自治体の手引きでその場で確認してください。

個人名義で受けた最後の分のマニフェストの返送や、帳簿・書類の保存も残ります。個人の許可を廃止しても、保存義務がある書類は捨てない——ここも忘れずに。

会社の許可は「新しい5年」になる

承継と違って、法人成りは新規の取り直しなので、会社の許可は、許可を受けた日から新しく有効期間が始まります。個人の許可の残り期間を引き継ぐわけではありません。

いっぽうで、個人の許可で受けていた優良認定などは、会社にそのまま引き継がれるものではないと考えておいたほうが安全です。会社として実績を積み直す必要があるかどうかも、あわせて窓口で聞いておくと安心です。

期限の管理表は、個人の許可と会社の許可を別の行にして、しばらくは両方を並べておくと混乱しません(産廃許可の更新を忘れないための期限管理)。

影響:急がなくていい、でも「先に相談」が効く

法人成りの許可で困る場面は、たいてい会社の設立日だけが先に決まっていて、許可の段取りが後から追いかけるときです。

逆にいえば、設立の話が出た時点で窓口へ一本電話を入れておくだけで、

が分かります。これが分かれば、会社の許可が下りる日から逆算して、切り替え日を決めることができます。仕事を止めずに済むかどうかは、ほとんどここで決まります。

明日やること(小さく分けて)

今日はここだけ確認できれば十分です。

  1. いま個人で受けている許可を、自治体ごとに書き出す(品目・有効期限も一緒に)
  2. 会社の設立予定日を確認する(税理士さん・司法書士さんと決めている日)
  3. 定款の事業目的に、産廃の事業が入っているか確認する
  4. 許可を受けている自治体の窓口に、「法人成りで新規申請したい」と電話を一本入れる
  5. 申請から許可までの期間の目安を聞き、会社名義へ切り替える日を仮で決める
  6. 取引先の一覧をつくり、契約を結び直す相手と順番を決める

4番までは、今日中でも終わります。一度に全部進めなくて大丈夫です。

法人成りの許可取り直しチェックリスト

最低ライン(今日中にここまで)

そのうえで、順番に

よければ、こちらも

最後に

個人で始めた仕事を、会社にする。 それは、これまで一台一台、一件一件を積み上げてきた結果です。許可の取り直しは手間に感じるかもしれませんが、中身が変わるわけではありません。あなたがやってきた運び方も、取引先との信頼も、そのまま会社に持っていけます。

変わるのは、名義と順番だけ。会社をつくる、会社で申請する、許可が下りてから切り替える、最後に個人を閉じる。 この4つを紙に書いて、明日、窓口に電話を一本かけてみてください。新しい会社の最初の一歩は、そこから始まります。

新しい会社の事務所の前で、小型トラックの横に立ち、晴れた空の下で穏やかにほほえむ作業着姿の事業主

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