
単価や運搬先が変わったとき、覚書で契約を直す手順
処理単価が改定された。運搬先の処分場が変わった。荷姿や数量の見込みが変わった——。 委託契約を結んだあとにこうした変更が出てくると、「契約書をまた一から作り直すのかな」「そのままにしておいて大丈夫かな」と迷いますよね。
最初にお伝えしたいのは、変更に気づいて「契約をどうしよう」と立ち止まれたこと自体が、もう丁寧な仕事だということです。 この記事では、契約を作り直すのではなく覚書(おぼえがき)で変更を残す考え方と、盛り込みたい項目を、慌てず確認できる順番で整理します。
結論:委託契約の内容が途中で変わったときは、契約書をまるごと作り直さなくても、変更点だけを「覚書」や「変更契約書」として書面に残すのが実務では一般的です。産廃の委託契約書は、単価などの「委託した廃棄物の処理に係る料金」も書面に残す事項とされているため、口頭やメールだけで済ませず、変更後の内容がわかる書面を双方で交わすのが基本です。ただし何を書面化すべきか・様式は、契約の元の条項や相手方の運用によって異なることがあるので、迷ったら相手方にも確認しておくと安心です。
迷ったときは、次の3つの順で押さえると整理しやすくなります。
- その変更は「覚書で足りる」か「契約し直し」かを切り分ける
- 覚書に盛り込みたい項目をそろえる
- 交わしたあとの保管と、許可証の写しの扱いを確認する
何が起きやすいか

委託契約の変更でつまずきやすいのは、次のような場面です。
- 単価だけが変わったのに、契約書を全部作り直すのか、単価表だけ直せばいいのかが分からない。
- 運搬先(処分場)が増えた・変わったが、元の契約書に書いた行き先と食い違ったままになっている。
- 電話やメールで「単価上げますね」と言われて了承したものの、書面が残っていない。
- 覚書は作ったが、元の契約書のどの条項を変えるのかがあいまいで、あとから読み返すと分かりにくい。
どれも、「変えたこと自体」より「変えた内容が書面でそろっていない」ことが、あとで不安の種になります。
1. 「覚書で足りる」か「契約し直し」かを切り分ける
まず、その変更が軽い直しで済むのか、契約を結び直したほうがいいのかを分けると、やることがはっきりします。
- 覚書(変更契約書)で足りることが多い変更:処理単価の改定、運搬先や処分先の追加・変更、数量見込みの変更、有効期間の延長など、元の契約の枠組みは同じで一部だけ変わるもの。
- 契約を結び直したほうが安心な変更:契約の相手方そのものが変わる、対象の廃棄物の種類が大きく変わる、収集運搬と処分をまとめていた契約を分けるなど、契約の土台が変わるもの。
迷ったときの目安は、「元の契約書を生かしたまま、変わった部分だけ差し替えられるか」です。 差し替えで足りるなら覚書、土台から見直すなら契約し直し、と考えると整理しやすくなります。
ここで大事なのは、単価のように書面に残す事項が変わるときは、口頭やメールだけで終わらせないことです。 「言った・言わない」を防ぐ意味でも、変更後の内容がわかる書面を双方で交わしておくと、あとから落ち着いて確認できます。
契約書に必ず入れる事項そのものを確認したいときは、委託契約書に必ず入れる法定記載事項チェックリストもあわせて見てみてください。
2. 覚書に盛り込みたい項目をそろえる

覚書は、決まった様式があるわけではありませんが、あとで読んだ人が迷わないことを目安にそろえると安心です。次のような項目が入っていると、読み返しやすくなります。
- どの契約の変更か:元の委託契約書の名称・締結日(何年何月何日付の契約か)を書き、どの契約を直すのかを特定する。
- どこを変えるか:変更する条項や項目(例:処理単価、運搬先、有効期間など)を、変更前と変更後が分かる形で書く。
- いつから適用するか:変更が効く日(適用開始日)を書く。さかのぼるのか、これからの分なのかをはっきりさせる。
- 変わらない部分の確認:「本覚書に定めるほかは、元の契約のとおり」といった一文で、直していない部分は元のままだと分かるようにする。
- 日付と署名(記名押印):双方が同じ内容で合意したことが分かるように、両者の署名(記名押印)と交わした日付を入れる。
単価の変更なら「変更前○○円/変更後○○円、○年○月○日搬入分から」のように、変更前・変更後・いつからの3点がそろっているかを見ておくと、行き違いが起きにくくなります。
なお、契約書に単価表や品目表を別紙で添付している場合は、本文の覚書だけでなく別紙も差し替える必要がないかを確認しておきましょう。本文は直したのに別紙が古いまま、というのは見落としやすいところです。
3. 交わしたあとの保管と、許可証の写しの扱い
覚書は、作って交わして終わりではなく、元の契約書と一緒に保管しておくのが基本です。 契約書と覚書がばらばらに保管されていると、いざ確認したいときに「今どの内容で契約しているんだっけ」と分からなくなりがちです。
- 覚書は、元の委託契約書と同じファイル・同じ場所で保管し、セットで見返せるようにする。
- 委託契約は契約が終わってからも一定期間の保存が必要とされるため、覚書も同じ扱いで残しておく。
- 運搬先や処分先が変わった場合は、その業者の許可証の写しが最新のものになっているかもあわせて確認する。契約に添付する許可証の写しは、有効期限や事業範囲が今の実態と合っている必要があります。
契約に添付する許可証の写しがそもそも今の内容と合っているかは、委託契約書のどこを確認すればいい?現場でつまずきやすい点でも触れています。
変更のときに気をつけたいこと
- 単価など書面に残す事項の変更は、口頭やメールだけで終わらせない。変更後の内容がわかる書面を双方で交わす。
- 覚書はどの契約の・どこを・いつから・どう変えるかがそろっているか見直す。
- 本文だけでなく、別紙(単価表・品目表など)も古いまま残っていないかを確認する。
- 様式や書面化の要否に迷ったら、思い込みで進めず、相手方や許可権者(自治体)の案内で確認する。
明日からできる、契約変更で慌てないための一手
- 単価や運搬先の変更連絡が来たら、まず「これは覚書で足りるか」を切り分けるクセをつける
- 覚書を作るときは、変更前・変更後・いつからの3点が入っているかを声に出して確認する
- 覚書ができたら、元の契約書と同じ場所にセットで保管する
- 運搬先が変わったら、その業者の許可証の写しが最新かもあわせて見ておく
契約の中身そのものに迷ったときは、委託契約書のどこを確認すればいい?現場でつまずきやすい点もあわせて確認してみてください。
現場で使えるチェックリスト
- その変更が「覚書で足りる」か「契約し直し」かを切り分けたか
- 単価など書面に残す事項の変更を、口頭・メールだけにしていないか
- 覚書に「どの契約の変更か(元契約の名称・締結日)」を書いたか
- 変更前・変更後・いつから適用するかを書いたか
- 「本覚書に定めるほかは元の契約のとおり」など、変わらない部分を明確にしたか
- 別紙(単価表・品目表)の差し替えが必要ないか確認したか
- 覚書を元の契約書とセットで保管したか
- 運搬先が変わった場合、許可証の写しが最新か確認したか
最後に

単価や運搬先が変わるたびに「契約を全部作り直すのかな」と身構えてしまいますが、多くの場合は変わった部分だけを覚書で残せば十分です。 今日、「覚書で足りるか切り分ける」「変更前・変更後・いつからをそろえる」「元の契約とセットで保管する」の3つが頭に入れば、それでもう前に進んでいます。
変更に気づいて、書面でちゃんと残そうとしている時点で、もう誠実な仕事ができています。 ひとりで抱え込まず、迷ったら相手方や窓口に相談しながら、落ち着いて直していきましょう。